31 August 2010

トリノ いち



国境の長いトンネルを抜けるとイタリアだった。




しばらく走るとまたトンネルがあった。




そしてしばらく走るとまた...(以下省略)。
アルプスを越えて突き貫けて行くので、トンネルばっかりなのである。


前日リヨンは三十度を超えていたが、国境あたりは涼しくて実に気持ちよい。アルプスはスキーリゾートだと思っていたワタシ、夏もバケーションロッジは週単位でレンタルと聞いて、最初は「スキーする場所でしょ?夏に来て一週間も何するの」と思った。しかしこの辺は文字通りの避暑地なのである。

休みだからって観光しなきゃいけないわけじゃないのだ。空気のよい涼しいところでゆっくり時間を過ごして、ハイキングでもして疲れたら近くの温泉で体を癒して(あるんですよ、温泉。スイス国境辺りに。ぬるいけど)、おいしいもの食べて...と、ゆっくりバカンス型の欧州の人にはぴったりの場所なんである。
 

 


さて。思い立って急に行くことにしたトリノ、リヨンからは高速道路で三時間半。週末に泊まりで行くのにちょうどよい距離で、一応外国だからちょびっと特別な感じを楽しむことができる上、飛行機旅行の面倒くささやうっとうしさがない。たった二泊で荷物も軽く、言うことなしである。






ホテルに荷物を置いて早速街に出て「おおお」と思ったのは、英語が上手な人が実に多いことと、もうひとつこれはやっぱりというかなんというか、みなさんとてもフレンドリーなことだった。これは三日間通してずっと感じたことで、挨拶すれば笑顔で明るい返事が返ってくるし、何か質問すれば時間をかけていやがらずに丁寧に教えてくれる。フランスにも親切な人はいないわけじゃないが、トリノではみんながみんなそうなので、結構カルチャーショックであった。
 





うほうほ言いながら建物の写真をパチパチ撮る。トリノの街の建築物は、リヨンやパリのものに比べるとさらに装飾的な感じ。建築の知識がないのでうまく説明できないが、窓や扉周りの装飾要素がフランスの街のそれよりももっとデコラティブな感じだった。妹尾河童の『河童が覗いたヨーロッパ』に、建築様式の違いやお国柄の違いが色々描かれていたのを思い出す。フランスに持ってきたつもりだったこの本、家中どこを探してもない!カリフォルニアの倉庫に置いてきちゃったようである。アマゾンで買おう買おうと思っているうちに、円高でなかなか手の出ない値段になってきてしまった。他にも三冊、どうしても欲しい邦書があるんだよなあ。「資料経費」として買っちゃおうかなあ。




  

もうひとつかなり印象的だったのは、食べ物がフランスに比べて実に安いこと。例えば市場で見たベリーの類は、小さなプラスチックの容器ひとつ分が1€。うちの近くの市場でも同じような容器に入って売られているけれど、これ、2.50€はすると思う。他にもミネラルウォーター一瓶たったの80サンチームとか。ムスコ用に頼んだチーズピザ、お皿いっぱいにでっかいのがたったの4€とか。フランスだったら(以下省略)。






しかし安いのは食べ物だけじゃなかった。ウィンドウショッピングする時間もほとんどなかったのだが、ショップの前を通りがかりに見たお値段表で判断する限り、靴やバッグの革製品が安い安い。見た感じ質はとてもよさそうだったし、やっぱりイタリアだわ。じっくり買い物できなかったのが実に悔やまれる。また行くしかないな(そういう問題か?)






ところでワタクシ。朝食で飲んだカプチーノがおいしかったのでお代わりしたら、後で胃の具合が悪くなって大変なことになりました。多分ものすごく濃かったんだろうなあ。普段カフェインレスしか飲んでないしな。

もともと胃が弱いので、旅行中は食べ物で苦労することが多い。胃が丈夫で食に貪欲だったら、あちこち旅行する楽しみが二倍三倍に増えるのになあと思う。せっかくイタリアに行ったのに、もったいない話であった。


<続く>


29 August 2010

この夏最後の最後


 
夏休み最後の週末、滑り込みセーフで出かけた先は......


 

26 August 2010

ダブリンちょこっとだけ




レポートするほどの観光もせず、




写真もあんまり撮らなかったので、




ちょこっとハイライトで、数枚だけ。




それにしても暗い(笑)。




ギネスビール飲みたくなるのも分かる気がする。




オットよ、爪はちゃんと切っといて欲しかったぜ。


 

24 August 2010

Fresque des Lyonnaise





旧市街にある、ワタシのお気に入りの本屋さんの店先。



...というのは嘘で、

 





これは壁画。英語で言うとmuralまたはfresco。



リヨンの街は、建物の外側に施された壁画があちこちにあることで知られている。というのはワタシは引っ越してきてから知ったのだが、実は壁画とその所在地だけを載せたガイドブックも出版されているほど有名で、初夏にアメリカから訪れた友人も「有名なリヨンの壁画を見に行きたい」とリクエストした位だった。








色々ある壁画の中で、ワタシが好きなのはだまし絵風のもの。これがまた市内各地に沢山あるのだね。うちの近くでも、四階建てアパートの三階の窓だけ絵だったということに何度も前を通っていて気づかなかったとか、発見するのが楽しいのだ。



今日の写真のだまし絵壁画は特に有名で、傍を通ると必ず誰かが写真を撮っている。今昔のリヨンの著名人を描いたもので、旧市街からPresqui'le(半島)に向かって、Passerelle Saint-Vincentという歩行者専用の橋を渡ってすぐのところにある。







リヨンの有名人というと、ポール・ボキューズでしょ、






 


えっと、えっと、うーん、他にリヨンの有名人... 思いつかないなあ... と思っていたら、こんな親切なもんがあった。







目を通したら、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの名前が。おお、すっかり忘れてました、ごめんなさい。







ええと、14番、リュミエール兄弟のすぐ上ね。あ、いた。星の王子様も一緒だ。こういう時、望遠レンズがあったらなあと思っちゃう。






隣でギニョール持ってるのはもちろんギニョールの生みの親なんだろうが、名前はこのリスト見て初めて知った。




いやしかしこの壁画、本当によく描かれていて、じいいいっと見ないとどこまで本物でどこから絵なのかすぐ分からない。







特に後から写真で見ると、石のブロックなんか本物に見える。通りの名前の看板は本物(=立体)ですよ。







クレーン車かなんかがあったら、上の方の絵も間近でじいいいいっと観察できるのになあ。



 


 

22 August 2010

antoine & lili



クロワ・ルスのふもとにあるこのブティック(音出ます)




ちょっとレトロでちょっとキッチュで、とてもおしゃれ。目にご馳走なので時々のぞきに行く。





婦人服と子供服、バッグやアクセサリー以外にも、ちょっとしたおもちゃとか文房具なんかの小物を置いている。

デザインのセンスが、これまた大好きだった(しかし数年前につぶれてしまった)Oililyというブランドによく似ていて、見つけたときは声出して喜んだのだった。






フランス国内にいくつか店舗があって、本店は(多分)パリのCanal Saint-Martinのすぐ傍の店舗。リヨンには、この一区のお店以外に二区にもう一軒。






このCanal Saint-Martinの本店が、先日買った絵本に載っていて大喜びしたのは何を隠そうワタシです(幼稚)





写真と比べてもすごーくよく描かれているのが分かって、うはうは言いました。このイラストレーターさんもファンなんじゃないかな、きっと。

で、目にはご馳走だけれどお財布には全然ご馳走じゃあないこのお店。冬のバーゲンの際にTシャツを買ったんだけれど、半額だったにもかかわらずかなりの勇気が必要だった。



この日はまだ夏のセール品が残っている時期だったけれど、欲しいものはなかった...と言いたい所だが、やたら可愛い塗り絵のセットがあったので、ついつい買っちゃった(やっぱり幼稚)。だって本当に可愛かったんだも~ん。

さすがにこんなもの買ってどうするんだという気はするので、そーゆー自覚があるだけ幼稚度がましだということにしておいて下さい。
 


 

19 August 2010

tara brooch




この春プロヴァンスに旅行したとき、ジャンク市でティーセットを買った。



カップ&ソーサー六客とシュガーポット、そしてクリーマーのセット。周りに置かれていたジャンクの山の中でこれだけまさしく「掃き溜めに鶴」のごとく光を放っていて、引き寄せられるようにそばに行って、手にとって見た。そんなに古くはない。

不思議なシンボルに妙に惹かれる。作りも色も上品だなあと思いながら裏返してみたら、Arklow RC Bone China with Noritake  Ireland Limited Editionと書かれている。ノリタケだったのね。どうりで上品なわけだ。

この時点でもうすごく欲しくなっていたので恐る恐る値段を見たら、40€と書かれていたのを消してあって35€という、嘘のような値段。全部セットでの値段ですよ。ひとつひとつひっくり返してチェックしたけれど、傷や欠けた部分は全くなし。ごみの山のなかから宝石でも見つけたような気分。


というわけでリヨンまで大事に持って帰ってきて、この気になるシンボルをさっそくリサーチしたのだが、まるでお手上げ。Arklowというのはダブリンから南50キロほどにある街で、伝統的な陶器で有名だったけれどノリタケに買収されて、Arklowの工場は現在では存在しない(こちら参照)。「Arklow」だけを検索するとオークションサイトや商品補充サービスのサイトに沢山当たるので、もう生産はされていないがコレクタブルとして人気があるらしい。

…というところまでは分かったのだが、例のシンボルに関しては全く手がかりなし。売りに出されているArklowのティーセットも色々チェックしたが、このデザインのものはちょっと見た限り見当たらなかった。

残念。そのうち、オットの同僚のアイルランド出身の人に聞いてみよう…と思っていた。

そしたらね。

今回の旅行中、ダブリン近郊の小さな町のジャンク市場で、見つけたのだよ、ほぼ同じ形で全く同じシンボルが描かれているカップ&ソーサーのセットを。引っくり返してみたらやっぱりArklowだった。胸が高鳴る。

お店の人に、シンボルのことを聞いてみた。この女性、訛りがものすごく強くて言ってることがほとんど理解できなかった(同じ英語だけどね。向こうにしてみればワタシの訛りがものすごく強いわけなのだ)が、このシンボルが「Taraなんとか」と呼ばれていることだけ分かった。狂喜乱舞とまでは言わないが、そこまで分かればあとはインターネット。

「Tara Ireland」で検索したら、いっぺん引っかかった。わ~いわ~い。

簡単に言うとこういうデザインのブローチであるということ。本物はダブリンにあるアイルランド国立博物館に展示されているらしい。七~八世紀のものだそうだ。へえ~~~~~~。



なんだか宝物を二度発見したような気分で、とてもうれしい旅行の「おまけ」だった。






 

18 August 2010

だからほんとにみんなかご



 

二週間ほど前の日曜市で。

うちのオットだったら持つのを拒否すると思います。可愛いなあ、このかご。

17 August 2010

06 August 2010

旅行前、そして帰宅後の鬱





日曜日から一週間旅行に出る。現在まだ金曜日の昼間だというのにすでに荷物つめの真っ最中。

なんでこんなに早く荷物をつめているかというと、大仕事が控えていて明日は忙しいから。






その大仕事というのは、家の中にある家具を半分以上動かすことなのであった。なぜ家具を動かす必要があるか、とお尋ねですか?



…よくぞ聞いて下さいました。 



今のアパートに引越す際、家具搬入時に業者が美しいアンティークの床にとんでもない傷をつけたことは以前記事にしたけれど、この修理のために床に傷のある部屋をぜんぶカラにしないといけないのである。床を削ってワックスをかけた後、丸々四日間は物をのせても上を歩いてもいけないので、この修理作業は我々が一週間ほど留守にする時でないとできないのだ。

そして実際には、カラにしないといけないのは傷のある部屋だけじゃない。床の模様が続いている部分は全部削って磨きなおすので、床が模様続きの部屋は全部カラにしないといけないのである。

ってことは、傷のある玄関部分とリビングルームだけではなくて、オットのオフィスにしているリビングの隣の部屋とダイニングルームも空っぽにしないといけない。ここらにある家具は、ダイニングテーブルとかソファとかコンピューターをのせてる机とか本棚とかテレビを入れているキャビネットとかピアノとか、要は重くてでかい家具ばかりなのである。

この家具大移動の話も前にどこかでふれたような気がするが(ああ、最近もう記憶力が…)、それはなぜかというと、冬休みに一度、床修理のための家具移動をやっているから。一回やってるのになんでまた家具を動かすのか、とお尋ねですか?


…よくぞ聞いて下さいました。


二月のスキー旅行の際に、我々はよいしょよいしょと家具を動かして、修理業者に鍵を渡してから出かけたのであった。帰宅したら床はきれいになっていて、家具を元の位置に移動すればすべてめでたしになるはずであった。

そしたらスキーでルンルン休暇中のオットに電話がかかってきて、「アパートの鍵が使えないので中に入れません」。

え?と思うでしょう。まさか、と思うでしょう。


我々は入居時に、不動産屋さんに鍵を五セット渡されている。アパートの建物に入る鍵(大ドアと小ドアがあるので鍵はふたつ)、我が家のドアのメイン・ロックの鍵、メインの上にある鍵穴の鍵、メインの下の鍵、さらには地下室の鍵と屋根裏部屋の鍵と郵便箱の鍵…と、もう何が何だかわからないほどの数の鍵が、じゃらじゃらじゃらじゃらととにかく全部で五セット。「はい」と渡されて、どれも見た感じ同じだから、どれも同じと思うでしょう。

スキー旅行に出かける前に、このうち一セットを、ワタシはバスにのって床修理工さんのいるショップまで持っていったのである。この鍵が、使えないのでうちに入れないというのである。建物の中には入れた(その鍵は使えた)が、我が家のドアの鍵を開けることができないと。

帰宅してから手元に戻ってきた鍵をよーく見てみたら、微妙に形が違う。試してみたらやっぱり開かない(いや、業者さんの言うことを信じなかったわけではないが)

…ありえない。



いや、ありえるのである。フランスだから…?


まあそんなわけでその時の家具移動の苦労は全く無駄だったというわけで、オットもワタシも笑っていいのか泣いていいのか怒っていいのか、いや泣くのも怒るのもネガティブなエネルギーを使うのが悔しいし、ちゃんと鍵が使えるかどうか確認しなかった我々が悪いのかもしれないので、使えない鍵をいかにも~な感じにセットしてテナントに渡すなと叫びたいのを我慢して、仕方なく無理やり笑ってすませたという、それはその時の話であった。


我々は別に床に傷がついていても気にならないし、どっちにしてもあと二年経てばこのアパートを出るから、どうせならそれまで待って修理してくれればいいと思うのだが、一年以内に修理をしないと保険がおりないのである(こういうダメージは引越保険でカバーされている)。退去時まで待ったら、修理代は我々の懐から、実費になっちゃうのである。

それは困るよ。だってきっとものすごい値段にちがいないもん。



そんな事情で、文句言ってても仕方ないので明るく(ホントか)家具の移動も始めるワタシであった。旅行から戻って洗濯や食料の買出しだけでも結構大変なのに、まず重くて大きい家具を動かすことから始めなきゃいけないなんて、今から想像しただけでも気が重い…なんてことは、考えないでおこう、そうしよう。




記事と全く関係のない本日の写真、最初の二枚は先日のパリ・ヴァンヴの蚤の市での収穫品。スタンプはひとつ5€、ピッチャーは20€のを15€に値切って。取っ手の根元が割れていて修理した後があり、水を入れると重くなって危ないのでピッチャーとしては使えないけれど、お花を飾ったら可愛いかな~と。

こういう白地に青の模様の陶器がワタシは大好きで、和物・洋物問わずに沢山持っている。色が合っていると、どこの国出身の陶器でも並べてOKなところが非常によろしい。

春にエクサン・プロヴァンスで買ったお皿の写真(↓)も、意味なくアップしておこう。




04 August 2010

ちょびっとパリ

 



結婚十周年とオットの誕生日のお祝いを兼ねて、夫婦ふたりだけで週末旅行をさせてもらった。


 



ムスコが生まれてから夫婦だけで三時間以上過ごしたことがなかった我々。アメリカでは珍しいと思う。

オットもワタシも、近くに頼れる実家や親戚のない暮らしが長い。信頼できて、なおかつ泊まりで子供の世話を頼んでも心苦しくない親しい友人というのもいなかった。カリフォルニアに居たときひと家族そりゃもう仲良くさせて頂いているお宅があったのだが、そこはお子さんがふたりいらして、しかし三人の子供をいっぺんに輸送できる車をお持ちじゃなかったので頼めなかった…、そんな車社会の事情もあり。







まあ、子供預けてまでふたりだけでどこかへ行きたいと思ったことがなかったのも事実である。








この夏初めて、色々タイミング&要素が重なって、「じゃあふたりでパリにでも行こうか」ということになったのであった。







いやあ、びっくりしましたねえ。子供がいないとこんなにも楽なんですねえ。そしてつくづく感じました、ワタシ。パリは子連れで行くところではありません。

去年フランスに越してまだひと月ちょっとの頃、オットの仕事と用事があってパリに家族三人で行ったのだった。暑いし(連日猛暑日)世界中から観光客が集まって混雑がすごいし(八月の第二週だったし~)で、「この街のどこが、一体どこが、ロマンチックなんだ?!?!?!」と絶叫したくなった記憶がある。

まあ今年は去年に比べて精神状態が随分ましだったということもあるが、実際に楽しみながら街を歩くことができて驚きであった。








オットのやりたいことと、ワタシのやりたいことを、半分ずつ。二泊三日はあっという間に過ぎた。








今日の写真は全てヴァンブの蚤の市から。ここは骨董品市ではなくて、ちょっとジャンクないかにも蚤の市~な雰囲気。上等でお高いものは少なくて、掘り出し物がいっぱい。地元在住だったら絶対買ったであろう椅子とか、あまりにも重いので諦めたメダリオンとか(↓下の写真)、欲しいものがあって胸はどきどき、手も震えてました(わっはっは)。あれもこれも写真は撮りたいし買い物はしたいしで、「あぁ、どうしよう、どうしよう…」の、おろおろ状態(わっはっはっは)


それを全く理解できないオットはさぞかし暇だったことでしょう。リベンジなのかどうか、この日の午後のオットのリクエストは、ワタシには全く興味のないHôtel des InvalidesにあるMusée de l'Arméeでありました(わっはっはっはっは)
 


次は二十周年だねえ。どこへ行かせてもらおうかねぇ。