ロンドンで楽しみにしていたことのひとつが、食べるもの。
…と言うと、「え?イギリスって、食べものがまずいんじゃないの?」と言う人がいる。
それって、料理は何が何でもフランスが世界で一番、というのと同じくらい古い認識だと思う。アメリカの料理は大味でまずい、というのと同じくらい古いと思う。
ロンドンの食べ物は、バラエティーが豊か。国籍も豊か。辛くあるべきものはちゃんと辛い。エスニック料理がそのままの味で入って来られたのは、イギリスという国に食に関する妙なプライドがなかったからではないだろうか。
ロンドンには買ってすぐ食べられるものが沢山あって、種類も豊富。市場に行くと、その場で売られている新鮮な食材をそのまま調理したようなおいしいものを売る屋台がずらりと並ぶ。街なかにはイートイン・テイクアウト両方OKのお店が数ブロック毎にあるし、帰宅して食卓でちゃんと食べたければ、レトルト食品やお惣菜を買って帰って盛りなおすというチョイスもある。どれも値段は手頃、そしてきちんとおいしい。
フランスでは、パン屋さんのシンプルなサンドイッチや屋台で買って立って食べるクレープの類と、レストランで座ってオーダーする食事とのギャップが大きく、その差を埋めるものがあまりない。お惣菜屋さんはそれほど多くない。パッケージ食品もないわけではないが、安くないくせに味は今ひとつどころか今みっつレベルで、非常時以外は食べたくない。
旅行中とか、夕方疲れている時とか、オットが出張で留守だから手を抜きたい時とか(こらこら)、ご飯の準備はしたくないけれど一時間半かけて外食するのも嫌だというときに、選択肢がないのである。
でもここはロンドン、選択肢は山のよう。ああ、うれしいなうれしいな。
そんなわけで旅行中の夕食は、借りていたアパートでのウチ食と外での食事が半々。立派なキッチンが付いていたにも関わらず一度も料理はせず、スープを温めたり、買ってきたラザニアをオーブンで焼いたりした程度。これこそ休暇。料理するのはまだいいとして、おなべ洗ったり生ごみ出したりシンク掃除したりするのが面倒なんだよね。休暇中くらい免除して欲しい。…と、普段おさんどんしているお母さんたちは思うはず。
あ、そうだ、ロンドンはコーヒーもおいしかった。Flat Whiteというオーダーの仕方も覚えた。そして楽しくておいしい思い出に浸りながらリル→リヨンのTGVのカフェ車でうっかりコーヒーを注文してしまい、苦いわぬるいわと散々なコーヒーに3€もとられ、ああまたコーヒーのまずい国に戻ってきてしまった…とがっかりしたのは、決して内緒ではありません。