リヨンからパリまでTGVで二時間五分の道のりのうち、一時間四十五分はただひたすら田舎を走る。車窓から見えるのはどこまでも広がる畑そしてまた畑。草を食べる牛の群れ。教会の塔をぐるりと囲む小さな集落。時々遠くの方にみえる古ーいお城。それはそれはのどかな、正しいフランスの田園風景である。
TGVに乗ってパリに向かうと、一時間ほど経った頃に、肩や背中からいつもより力が抜けているのに気付く。普段はそれほど意識していないけれど、交通量の激しい市街地に住んでいると、やはり常にどこかしら緊張しているにちがいない。二時間近く田舎の風景を眺めていると、その緊張がほどけていくのが分るのだ。
リヨン-パリ間の電車の旅の利点は、車窓から見える風景だけではない。飛行機の旅と違って出発ぎりぎりに駅に着いても大丈夫、セキュリティチェックで行列に並ばなくて(靴脱いだり上着脱いだりしなくて)OK、座席はゆったり足元のスペース広々、立って歩き回っても叱られない、タービュランスなし。トイレもちゃんとあるし食堂車だってあるから、車の旅と違って休憩所で停まらなくて済む。いいとこどりである。
アメリカでの電車の旅は、ずうううっと昔、ワシントンDCからニューヨークまでAmtrakで行ったことがあるだけ。車だと五時間かかるこの距離、Amtrakで確か三時間くらいだったんじゃないかしら。Amtrakの路線は西海岸にもあって、ロサンジェルスからサンタバーバラまでは、後半三分の一ほどが海岸沿いでそりゃあ眺めがいいのだ。乗ったことないのに何で知ってるかというと、いつもそのすぐ横のフリーウェイを車で飛ばしていたからである。
電車の旅は、子供の頃の夏休みの旅、田舎のおばあちゃんちに向かう旅を思い出させる。でもこの日、周りはみんなフランス語、通路向かいのご夫婦はクロワッサンとコーヒーで朝ごはん。おやつに持ってきたおにぎりをムスコとほおばりながら、「駅弁の釜飯が食べたいなあ。熱いお茶も欲しいなあ。それもペットボトルじゃなくて、プラスチックの蓋付き容器に入ってるお茶じゃないとなぁ」としみじみ思っちゃったワタシである。
4 comments:
カックイイ写真ですね。
私も横川の釜飯食べたい~。
雨に煙るエッフェルも、風情があっていいではないですか。赤のコートとのコントラストもすてき。
私も電車の旅が好きです。
ヨーロッパを電車で移動して国境を越えると
急に雰囲気が変わって国が変わったことを実感したり。。。
飛行機だとあっけないし、早くいったりにもつあづけたり
とにかくすべてが面倒なんですよね(笑)
そして、バスは楽だけれど窮屈だし時間はかかるし次のトイレ休憩が気になるし(笑)
そういえば最近電車で旅していないな〜。
■ガブさん、
釜飯…このあと食べたくてたまらなくなって、書くんじゃなかった、と後悔しました(笑)。
■tomさん、
父方の田舎が長野だったので、子供の時は楽しい汽車(決して電車ではない)旅行を経験しました。駅弁とお茶と、夏は冷凍みかん。親は楽しくなかっただろうけど(笑)。
中学生の時、大阪から島根県まで汽車で行ったのもいい思い出です。
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